TOP → サニターニュース一覧 → 2000年 → 第216号《虫の知らせ》
- 広東住血線虫
- 梅雨空のせいでか、このところ「頭に来る」ような出来事が続いているようだ。「頭に来る」とは、驚きなどのために頭に血が上ってかっとなることなのだが、実際に頭に来る寄生虫の幼虫がナメクジやカタツムリに潜んでいる。
広東住血線虫かんとんじゅうけつせんちゅうといって、親虫はドブネズミやクマネズミの肺動脈に寄生している。体長3センチ位の細長い線虫で、くるくる巻かれた腸には血液が満たされ、ぬくぬくと肺動脈内で生活し、産卵する。その虫卵は血流に乗って肺に運ばれ、そこでかえって、幼虫が気管、喉から食道、腸を経て、ネズミの糞と共に外界に排出される。
この幼虫がナメクジやカタツムリ、マイマイなどの陸生貝に取り込まれ、その筋肉内で0.5ミリ大の感染幼虫にまで成育する。ナメクジ1匹に数千の広東住血線虫の感染幼虫が潜んでいることもある。
このナメクジをネズミが食べると、感染幼虫が消化管から侵入し、筋肉から末梢神経に入る。中枢神経の脊髄から脳に移行し、しばらく留まって一センチ大の若虫になる。感染1カ月で脳のクモ膜下を経て、脳静脈から肺動脈に移動して成虫にまでなる。
幼虫寄生のナメクジをカエルや淡水産のテナガエビ、カニ、プラナリアなどが食べると、幼虫はそのまま体内に移行するので、それらを食べても感染する。
- ヒトへの感染
- ヒトでは、ナメクジの潜む生野菜を気付かずに切り込んで口にしたり、民間療法で飲み込んだり、幼虫の寄生したカエルやエビなどを料理したまな板などから感染する。幼虫は脳に集まり、肺に移行することなく、そのうち死んでしまう。ところが、その間に脳髄膜刺激などで、激しい頭痛、発熱、吐き気などを起こし、髄液や血液に好酸球が増え、好酸球性髄膜脳炎こうきんきゅうせいずいまくのうえんという嫌な病気を起こす。
この寄生虫は元は南の島々で知られていたのだが、交通機関の発達につれてネズミと共に世界中に広まって、日本では沖縄から今は北海道にまで広がってしまった。
- 幼虫移行症
- 「頭に来る虫」には、この他、線虫では、幼虫の潜む豚肉や熊肉から感染するトリキネラ(旋毛虫ともいう)、雷魚、ドジョウ、鶏肉などから感染する有棘顎口虫ゆうきょくがくこうちゅう、ペットのアライグマや幼犬の糞に含まれる虫卵から感染するアライグマ回虫、犬回虫で脳に寄生されることがある。
サナダムシでは、犬やキツネの糞に含まれる虫卵から感染するエキノコッカス(包虫ともいう)、有鉤条虫ゆうこうじょうちゅうに感染したヒトから排出された虫卵をなんらかの原因で口にして感染する有鉤嚢虫ゆうこうのうちゅう、幼虫の潜むケンミジンコやカエル、ヘビ、トリ、豚肉などを口にして感染するマンソン孤虫がいる。
吸虫では、淡水貝から出た幼虫がいる水につかって感染する住血吸虫の虫卵、幼虫の潜む淡水産のカニ類から感染する肺吸虫が脳に来ることがある。
- トキソプラズマなど
- 原虫では原虫の潜む豚肉や鳥肉などや、猫の糞から感染するトキソプラズマ、プールなどで鼻粘膜から感染するネグレリア・アメーバと免疫不全で発症するアカント・アメーバ、赤痢アメーバなど多くが知られている。熱帯熱マラリア原虫は重症になると脳の血管を詰まらす脳マラリアを起こす。アフリカで原虫を持ったツエツエバエに刺されて感染するトリパノソーマも眠り病を起こして恐ろしい。
死なないまでも、てんかん発作を起こしたり、頭痛、高熱、嘔吐、麻痺、失明、めまい、精神運動障害などで苦しめられ、検便で虫卵が見つかることもなく、薬が効かないものも結構あって、本当に「頭に来る」ことが多い。
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